SNSが誕生した時期に思春期を迎え、SNSの隆盛とともに青春時代を過ごし、そして就職して大人になった、いわゆる「ゆとり世代」。彼らにとって、ネット上で誰かから常に見られている、常に評価されているということは「常識」である。それ故、この世代にとって、「承認欲求」というのは極めて厄介な大問題であるという。それは日本だけの現象ではない。海外でもやはり、フェイスブックやインスタグラムで飾った自分を表現することに明け暮れ、そのプレッシャーから病んでしまっている若者が増殖しているという。初の著書である『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)で承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた川代紗生さんもその一人だ。「承認欲求」とは果たして何なのか? 現代社会に蠢く新たな病について考察する(本編は書籍には収録されなかった番外編です)。
英語で悪口を言われた衝撃体験
大学3年生の頃の話である。
私の大学には留学生がたくさんいた。すれ違う5人に1人は英語をしゃべっているような感覚だ。欧米系からアジア系からアフリカ系からアラビア系まで、ありとあらゆる人種が揃う。だからときどき、ここは本当に日本なのかと思うことすらあった。私はそのとき、次の授業に向かうべくエスカレーターに乗っていた。授業5分前には、踊り場はかなり混雑する。我先にエスカレーターに乗ろうと、次から次へと人が溢れてきた。
私は考え事をしながらぼーっとして人の流れにまかせてエスカレーターに乗ったのだが、ふとこんな言葉が耳に入ってきた。
Hey, Who is this girl?(なあ、この女の子誰?)
ん? と思って顔を上げると、前に立つ留学生らしき男の子が、私のうしろにいる友達に話しかけている様子だった。
どうやら私は、ぼんやり人混みに入っていったせいで、友達同士、外国人留学生二人組の間に紛れ込んでしまったようだった。まあ、混雑しているエスカレーターに乗るときにはよくあることだ。
が。
問題はそこじゃなくて。
I don’t know.(知らねー)
ふたりは私を挟んで、平気で会話を始めた。英語だからわからないとでも思ったのだろう、「なんか間に立ってるんですけど」「何この人」「気づいてないんじゃね?」「うける」みたいな会話を(全部は聞き取れなかったけど)私がいる目の前で堂々と話し始めたのだ!