西側諸国が発動したロシアに対する一連の包括的な経済制裁は、世界の主要国に対するものとしては過去最大級で、ロシア経済を疲弊させ、ウクライナ侵攻の代償を極めて大きなものにする見通しだ。だが、制裁措置がウラジーミル・プーチン大統領にウクライナからの軍撤退を決断させる、あるいはプーチン氏の求心力を弱めることにはならないだろうと専門家はみている。「過去の制裁の歴史において、標的とした国に対して政策や譲れない一線を変えさせた実績はほとんどない」。米外交評議会(CFR)のリチャード・ハース会長はこう指摘する。これまで世界で実施された制裁による成果はまちまちで、ロシアのような専制国家についてはとりわけ、言動を劇的に変化させるには至っていないと指摘されている。イランに対して2015年の核合意を迫り、最近でも指導者に交渉のテーブルに戻るよう促したのは、経済制裁が要因の一つと考えられている。だが、中東での攻撃的な武力行使といった米国が問題視するイランの行動を変更、あるいは食い止めることはできなかった。北朝鮮についても、米国や国連が経済制裁を発動しても核開発を断念していない。