連載第16回は、極端とも言えるほどに浮き沈みの激しい外食業界で、生き残りがいっそう厳しくなっているラーメン店のシュリンクの実態に迫る。
今回紹介する個人ラーメン店の店主は、チェーン店に加盟することなく、価格破壊にうろたえることがない。妻はそんな夫を献身的に支える。老夫婦が味わった「業界の味」とは……。人物名と店名は実名でお伝えする。
あなたは、生き残ることができるか?
今回のシュリンク業界――ラーメン店
ラーメン店の市場規模を示す統計データは見当たらないが、5000億~7000億円と推計されている。個人経営店が圧倒的に多く、個人が8割、法人が2割と言われる。
店舗数は「専門店」で約4万軒、ラーメンを提供する食堂や中華飯店、ファミレス、居酒屋などを含めると、約20万軒。店舗数はここ数年、横ばい状態であり、激戦区では廃業する店も多く、入れ替わりが激しい。
ここにきて、大手資本のチェーン店の進出も加速しており、「290円ラーメン」の登場などによって価格破壊が進む。生き残りが一段と熾烈になっている一方で、味にこだわることで固定客をつかみ、1000円前後のラーメンを提供する店もある。市場は頭打ちの状態が続いているため、大手チェーン店の中にも海外市場に活路を求める店が現れ始めた。
「お客さんに喜んでもらえるのが、今の生き甲斐。こういう味のラーメンをつくれることに誇りを感じているし、感謝もしている。ありがたいことだよね」
「らぁめん ひら石」の店主・平石晃さん(70歳)は、カウンター越しの椅子に座り、少し笑いながら話す。