ニッケル市場の大惨事、モラルハザードの教訓にPhoto:Future Publishing/gettyimages

――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

***

 ロンドンのニッケル市場で今週、潮が引いた。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の不朽の名言を借りるなら、「誰が裸で泳いでいたか」が判明した。追い証を手当てできなかった中国のニッケル生産大手だ。追い証とは、レバレッジ(借り入れ)による取引で損失が発生した場合に、証券会社から差し出すよう求められる追加保証金だ。

 ロンドン金属取引所(LME)は、市場の浄化作用に任せてこの借金まみれのトレーダーを排除することはしなかった。それどころか、売買を取り消すことでその代償から救うことを決断した。

 これは不透明なコモディティー(商品)における偶発的な事故ではない。自由市場を損ない、間違ったインセンティブ(動機付け)を生み出す傾向が招いた当然の帰結だ。大きすぎてつぶせない存在でなくても、当局は金融グループの経営破たんを容認することに及び腰になっている。