米ウォール街の銀行大手は、かつて西側の金融システム導入を手助けできると期待していた国から撤退を余儀なくされている。ロシアがウクライナへの侵攻を開始して2週間。米銀大手も、ロシア事業の停止計画を相次ぎ表明する多国籍企業の後に続きつつある。JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスはロシアとの既存の関係を断ち、新規の案件を避けている。米銀の中でもロシア事業の規模が最も大きいシティグループは、すでに支店網の売却を発表しているほか、ロシア事業の将来について検討している。良い時も悪い時も現地にとどまることを選ぶ傾向にある企業の一団にとっては、異例の急速な撤収だ。とりわけ米国の銀行は政治の風向きが変わっても、当該国からの撤退には常に消極的で、現地で事業を展開する顧客の支援を続ける道をできる限り選んできた。その強い欲求こそが、人権問題への懸念を上回る収益機会をもたらしてきた中国やサウジアラビアといった国々で事業を存続させる原動力となってきた。