根拠のない情報はどう生まれる?
ビジネスが目的の可能性も

 それにしても、こういった陰謀論はどこから生まれるのか。その疑問を考える上では、海外で行われたある調査結果が興味深い。

 ワクチン接種が始まって以降、海外では「ワクチンを打つとチップが埋め込まれて監視される」「接種すると不妊になる」といった根拠のない反ワクチン情報がSNSで拡散された。

 アメリカ・イギリスを拠点とする民間調査団体CCDH(デジタルヘイト対抗センター)がこれらの情報を分析すると、拡散された情報の65%がわずか12人のインフルエンサーによって生み出されたものだと分かったという。

 さらに注意したいのは、こういった情報発信が“ビジネス”に使われていたことだ。上述した海外の調査では、12人のインフルエンサーの1人である現役医師が「反ワクチンセミナー」を開催。1人約2万円の参加料を徴収し、1度のセミナーで4000万円以上の収入を得たこともあったという。

 日本でも似た調査結果が出ている。東京大学大学院の鳥海不二夫教授が行った分析によると、反ワクチン系ツイートの約50%は、わずか29アカウントが出どころとなっており、それを多数の拡散者がリツイートで広めている構造が見られたという。

 そして情報発信者がビジネスにつなげる点も、海外と似ているようだ。

「日本でも反ワクチンの発信者を見ていくと、セミナーなどを開いてマネタイズしているケースが見られます。さらに、コロナ前もいろいろな陰謀論が日本で生まれてきましたが、それぞれの陰謀論の情報発信者を追っていくと、同一人物にぶつかるケースも少なくありません。そういった人物は、さまざまな事象を陰謀論につなげて、マネタイズしている動きが見られるのです」

 科学的根拠のない情報が、実はビジネスの種になっている可能性がある。特にコロナやワクチンに関する情報は拡散されやすい。目の前に流れてきた情報を信じ込む前に、この点は留意すべきだろう。