──多角化経営は良くないという考えか。

 多角化経営は、良いとも悪いとも言えない。その企業が抱える個々の事業が、他社の競合する事業と比べて競争力があるかどうかが問われる。それぞれが強ければ問題はない。しかし実際は、多角化経営は、企業収益にマイナスに働くことが多い。

 大きな原因は、市場環境の変化に、機敏に対応していないことにある。急激な為替変動や、技術動向の変化に、スピーディに対応していない事例をしばしば見る。

 環境悪化で、キャッシュフローが急減する事業があっても、「他の事業がカバーしてくれる」と思いがちで、危機を真摯に受けとめない傾向にある。

 企業全体で、複数の事業を抱えることで、リスクを分散するという方法が、経営者や社員の士気に悪い影響を及ぼしてしまうのだ。

 投資家の立場からしても、個々の企業について、事業のポートフォリオを、気にかけることはない。リスク分散は、複数の企業に投資することで、満たすからだ。

──日本企業では2000年代初頭に低収益が続いた際、「あまりに多くの事業に手を広げ過ぎ。どの事業で稼ぎ、どの事業には手を出さないかを決める“戦略”がない」「事業の選択と集中が必要だ」などと投資家や経営学者から批判された。しかし、その批判を受け入れて、実行した家電メーカーの中には、事業の選択と集中に失敗し、今日、存続の危機に陥っている企業がある。どう考えればいいのか。

 個別企業についてコメントはできないが、結果として、米国では多くの大企業が、事業の選択と集中を行っている。

 多角化経営の場合でも、事業の選択と集中を行う場合でも、個々の事業が、競合他社の事業に対して競争優位にあるかどうかをきちんと把握することが肝要だ。その見極めのポイントは、自社の事業が他と比べて、差別化されているかどうか、だ。