米国に上場する中国企業では、幹部などのインサイダーが過去数年にわたり、株の売り抜けにより巨額の損失を回避していた。証券当局への提出書類を分析した研究者の論文で明らかになった。2016年から21年半ばに行われた取引で、こうしたインサイダーは株が大幅に値下がりする前に売却することで、少なくとも100億ドル(約1兆2000億円)の損失を回避したという。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は論文に使われたデータや方法を確認した。株式を大量に売却した1年後の株価は平均で21%下落した。論文によると、米企業の場合はインサイダーによる取引後の株価は平均で2%上昇した。中国の電子商取引大手アリババグループの場合、傘下のフィンテック企業アント・グループは20年10月、新規株式公開(IPO)の準備を進めていた。ところが、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が中国の規制当局を批判した影響でIPO計画はとん挫。IPO中止の発表を受けて同年11月3日、ニューヨーク証券取引所でアリババ株は8%下落した。