【東京】捜査官がトレボー・ヒル被告(51)の自宅に現れたのは、新居のマンションに引っ越した日だった。子どもが巣立ち、妻と2人きりになった食卓には持ち帰りの夕食が並んでいた。米国人のヒル被告は日本の大手証券会社で、外国人としては異例とも言える幹部ポストに上り詰めた人物だ。彼は自身が率いる部署の一部取引について当局が調べていることは把握していたが、自分の身に降りかかってくることについては知る由もなかった。
それから数時間のうちに、ヒル被告は逮捕され、東京拘置所へと送られた。そこでは弁護士の同席なしに取り調べを受けることになった。日本の国内メディアは相次いでこれを報じ、ヒル被告はまさに渦中の人となった。検察側は、SMBC日興証券でヒル被告や部下のトレーダーらが不正に相場操縦を行っていたと主張している。日本のメディアの論調では今世紀最も重大な金融犯罪の一つと位置づけられており、かつて自動車業界に君臨していたカルロス・ゴーン氏の逮捕劇を巡る騒動をほうふつとさせる。