週末の夜、SMBC日興証券に衝撃が走った。専務執行役員ら幹部4人が、金融商品取引法違反容疑で電撃的に逮捕されたのだ。今回の事件は、SMBC日興の“弱点”が露呈した可能性が高い。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
ヒル容疑者の手腕を高く評価
UBSから移籍6年で専務に昇進
「知日派で日本のマーケット事情に詳しい。日本に投資する際は、有益な情報にあやかろうと彼にあいさつする外国人投資家も多かった」
米国に拠点を置く投資家がそう評するのは、SMBC日興証券の前エクイティ本部長、トレボー・ヒル容疑者だ。3月4日、金融商品取引法違反(相場操縦)容疑で東京地検特捜部に逮捕された、幹部4人のうちの1人である。SMBC日興は逮捕を受け、ヒル容疑者らの役職を5日付で解任した。
冒頭の投資家の証言からも分かる通り、ヒル容疑者は業界でよく知られた人物だった。2002年に入社したUBS証券で株式本部長などを務め、14年にSMBC日興に移籍。その手腕を高く評価され、20年に専務執行役員まで上り詰めた。近藤雄一郎社長も「職責に見合う人材」と認める。
ヒル容疑者だけではない。前エクイティ副本部長のアレクサンドル・アバキャンツ容疑者はドイツ銀行やシティグループを渡り歩き、前エクイティ部長の山田誠容疑者はゴールドマン・サックス証券出身だ。逮捕者に外資系投資銀行出身の外部人材が目立つが、そこに今回の騒動の真因がうかがえる。
いわばSMBC日興が内部に抱える弱みが、顕在化した可能性が高いのだ。