過去の成功例が通用せず、優れた手法はすぐに真似される「正解がない時代」。真面目で優秀な人ほど正攻法から抜け出せず、悩みを抱えてしまいます。リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏は、「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語ります。「自分らしく」「優秀で」「別の」やり方を組み合わせた「別解」を生み出すことで、他人の「優等生案」を抜き去り、突き抜けた結果を実現することができるのです。本連載では、平尾氏の初の著書となる『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』に掲載されている「現代のビジネスパーソンが身につけるべき、起業家の5つの力」から抜粋。「不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代」に自分の頭で考えて成果を生む方法を紹介します。

「自信も信用もない人」が磨くべき「唯一の武器」とはPhoto: Adobe Stock

根拠のない自信がリーダーシップに必要

ビジョンやメリットに対して理解を集めても、別解が実現可能かどうかを明らかにしなければ、メンバーは動きません。

リーダーとして、別解が実際に実現できることを論理的に説明できない限り、別解は絵に描いた餅に終わってしまうのです。

ただ、論理的に淡々と説明するだけでは、半信半疑のメンバーは行動をためらうでしょう。その際も、根拠のない自信は必要です。自信を持って、情熱をもって実現が可能なことを訴える。やはり、根拠のない自信を持てるかどうかが、別解力に関する圧倒的リーダーシップのきっかけとなるのです。

アウトプットの機会には、リーダーとして手を挙げることが別解を実現するために必要です。誰もやりたがらないときに自分がやるなど、行動する力を持たない限り、リーダーシップは育ちません。この経験は、若いうちほど積み重ねるべきです。

難易度は高いと思いますが、根拠のない自信を持てるように、リーダーとして小さな成功体験を積み重ねていく必要があります。

信頼が唯一の武器になる

別解を成功させれば自己効力感が上がり、根拠のない自信から「根拠のある自信」に変わっていきます。過信は禁物ですが、自信は深めていったほうがいい。なぜなら、未知の新しいことをやるとき、自信がないリーダーには誰もついていかないからです。

優秀であっても自信のない人は、アウトプットの機会に成功していないのだと思います。

信用は、成果を上げると飛躍的に上がっていきます。信用が増すとヒト、モノ、カネが集まり、拡大再生産や再投資につながります。

自信と信用とは別に、信頼も大切です。

信頼は人柄なので、自信と信用を持たない人にとっては唯一の武器になります。信頼関係を築きながら周りの人たちを仲間にし、次の実績をつくって自信と信用に変えていく。そういう作業を行っていきます。できるだけ早くひとりでやる仕事から仲間を巻き込む仕事に変えていかない限り、1000点という数段上のレベルには到達できません。

私が突き抜けた結果を出したときも、自分ひとりの力で成し遂げたわけではありません。

私は人脈もコネも生まれた環境も自分のソーシャルキャピタル(社会的ネットワークとそこから発生する信頼)も、すべてをフル活用して仕事をしたほうがいいと考えています。

そもそも、チームで仕事をしていない時点で、成功のスタートラインに立っていない気がしてなりません。そのチームでさえ、配属先の与えられた人材しかイメージしていない時点で、いままでの人生をうまく使っていないことを知る必要があります。

この本を読んでいるほとんどの人は、小学校や中学校に行っているはずです。高校や大学に行っていれば、その友人がいるはずです。当時の友人たちは、さまざまな業種に散らばっているのではないでしょうか。

こうした人たちとのつながりは、すべてあなたの無形資産です。無形資産は、別解を広げていくときの重要なポイントでもあります。さらに、友人の友人も潜在資産になります。場合によっては、現在、過去の顧客も潜在資産になるかもしれません。

現時点で直接の友人ではなくても、紹介してもらえれば仲間にカウントできます。信用・信頼が構築されるような取引ができると、顧客は企業経営におけるバリューチェーン(事業活動で生み出される価値の流れ)に入り、次の連鎖に広がっていきます。

さらに言えば、顧客の有形、無形の資産にまで着目してください。その資産にまでアクセスできると、成功する確率が高まります。

(本原稿は、平尾丈著『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』から一部抜粋・改変したものです)