手術予定だった老人が締め出され、移動手段なくホームレスに
上海のロックダウンは最初、旧市街である浦西と新市街の浦東が交代で4日間封鎖という短期間で終了できると人々は信じていた。しかし、予期せぬ長期封鎖になり、2500万人の上海市民は生活も精神状態も大変な混乱に陥っている。
SNS時代、その混迷ぶりは世の中の人々にリアルタイムに伝わった。これまでのコロナ感染阻止の優等生と見られた上海は大きなイメージダウンを招いてしまった。上海の混乱ぶりに関する報道やSNSからの情報は山ほどあるが、特に印象に残った事例をいくつか取り上げたい。
一つは心臓病の手術治療のために江西省から上海にやってきた足もおぼつかない老人の話だ。
病院が閉鎖命令を受け、ロックダウン解禁日まで彼を受け入れられないということで、老人はバスでどこかへ移動して待とうとした。しかし、公共交通機関はすでに稼働しなくなっていた。そのまま路頭に迷ってしまい、ホームレスのような暮らしを送るはめになった。同じく足止めを食わされたトラック運転手が見かねて自分の食べ物を分けあいながら、互いにこの緊急状態を乗り越えようとした。しばらくしてトラック運転手が他の目的地に移動できるようになり、老人は運転手が残してくれた数個のインスタントラーメンで我慢するほかなかった。
幸いなことに、道路の向かい側に住む住民が老人の存在に気づき、隔離された住宅のベランダから食べ物を吊るし下ろして老人を救援した。おそらく住民の報告を受けて、その後の深夜に老人は警察に保護され、命を落とさずに済んだ。
こうした事例はまだまだある。道路そばの電話ボックスに寝泊まりせざるを得なかった女性もいた。こういう人たちも、やはり住民からの食事支援を受けて生き延びられた。