上海ロックダウンPCR検査に並ぶ人々の行列(上海) Photo:Future Publishing/gettyimages

中国最大の経済都市、上海で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な状況にある。上海は「ロックダウン」状態に陥り、人々の暮らしや健康に大きな打撃を与えている。上海の混乱の様子は国内外で頻繁に報道されており、仕事やプライベートで関わりの深い筆者も心を痛めている。しかし、そんな中でも上海市民たちは独自に工夫し、行動し、この苦境を乗り切ろうとしているようだ。(日中福祉プランニング代表 王 青)

コロナ対策の「優等生」だった上海
ロックダウンに陥る事態に…

 中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大している。最大の経済都市である上海市では、3月中頃から感染者が続出した。

 上海市政府はあくまでも「一刀切」(一律にするという意味、乱暴な対策を指す)ではなく、「網格封閉」と呼ばれる、陽性者が出たコミュニティーだけを封鎖する措置を取っていた。ところが、3月下旬以降、感染拡大が止まらず、感染者数が急増している。

 そんな中、地元政府はついに3月28日から、上海市内を流れる川、黄浦江を境界に街を東西に分けて順番に封鎖することに踏み切った。ただ、当初の予定では解除となるはずだった浦東地区は、4月6日時点で封鎖されたままであり、実質的に上海全域が「ロックダウン」となる事態に発展した。

 毎日、数千人の陽性者が年齢や基礎疾患の有無を問わず、一律に隔離施設に送り込まれている。既存の医療機関はコロナ治療に圧迫され、病床は瞬く間にひっ迫に近づく。市内の展示場や体育館を使用するほか、郊外に仮設病院やコンテナ病院などを十数カ所設置するが、それでも足りない。

 同時に、透析や抗がん剤治療を必要とする多くの患者と急患が途方に暮れていた。中国のネット上では、2人のぜんそく患者が病院を転々とし、たらい回された結果、命を落としたというニュースが話題となっているが、これは「氷山の一角」だといわれている。多くの市民が、上海では事実上の医療崩壊が始まっているとみている。