――人事労務DDをする法人は他にもあると思いますが、どう差別化を?

海蔵 他にない強みは、独自の査定システムを開発したことです。人事労務分野の取り組みを280項目から査定し、1000点満点で採点します。残業代の未払いでもゼロかイチではなく、いくつかの要素で数値化しているので、課題が一目瞭然になります。

 査定システムを世に広げるために「一般社団法人全国労務監査協会」を立ち上げ、現在は特許を出願しています。査定結果が800点以上の場合は、同協会から「優良企業」として認定されますので、「ホワイト企業」としてアピールすることができ、求人の際に有効です。

 さらに、昨年、損害保険会社などと共同で「表明保証保険」を開発しました。当法人が人事労務DDをして査定システムで600点以上を上げた会社で、M&A後に問題が見つかったら、最大500万円を補償するという内容です。

――買い主は安心して企業を買収できるわけですね。

海蔵 もう一つ力を入れているのが、人事コンサルティングです。社長さまからじっくり話を伺い、会社を深掘りして、経営課題を見つけ出します。人事労務の課題は当法人で解決し、その他の課題が出てきたら提携する士業の方に依頼する形です。こちらはIPOやM&A以外の企業さまにもご利用いただいています。

――社労士事務所を開設されたのは40歳の頃だそうですが、それまではどんなお仕事をされていたのでしょうか?

海蔵 大学卒業後に、大阪市の外郭団体である老人福祉施設連盟に入職しまして、事務局長として社会福祉施設のサポートを手がけていました。その中で、民間企業からの相談が多かったことから、民間企業のためになることをしたい、と社労士の資格を取得。福祉専門の社労士として開業したのです。仕事をしているうちに、福祉以外の分野にもお客さまの幅が広がっていきました。

人事労務デューデリジェンスに注力 損保会社と「M&A保険」も開発大阪駅前のグランフロント大阪にもオフィスを構える
●社会保険労務士法人アウルス 事業内容/労務コンサル、M&AやIPOなどの人事労務DD、労務手続き、給与計算、所在地/奈良県香芝市瓦口2250-1-2階、電話/0745-71-8700

 お客さまの幅が広がった要因には、奈良中央信用金庫さんからお客さまをご紹介いただけたこともあります。他にも、M&Aに関して連携させていただいている信金キャピタルさんをご紹介いただいたり、研究助成金の申請にご協力いただいたりとお世話になっています。

――今後の展望を教えてください。

海蔵 昨年から準備していた「一般社団法人全国デューデリジェンス協会」を今年立ち上げます。こちらは、財務や環境など多様な分野のDDを手がける士業の先生が集う団体で、既にチームで仕事をしています。私どものメリットはさまざまな士業の先生とつながれること。ここから士業の垣根を越えた活動につなげていきたいと考えています。

 また、今年7月には名古屋オフィスをオープンする予定です。社長さまにお話をじっくり聞く仕事柄、各地にリアルな拠点があった方がよいのです。全国展開に向けて、着実に拠点を広げていきます。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年5月号掲載、協力/奈良中央信用金庫