地元特産のもち米の特性を生かした「ソフト大福」のヒットで雇用創出も実現

北海道一のもち米生産地である名寄市にある、道の駅「もち米の里☆なよろ」。特産のもち米を使った加工品や農産物などが販売される中、ひときわ目立つ場所に並ぶ看板商品が「ソフト大福」だ。(取材・文/大沢玲子)

地元特産のもち米の特性を生かした「ソフト大福」のヒットで雇用創出も実現代表取締役・堀江英一氏

 その名の通り、滑らかで柔らかい食感が特徴で、塩豆、よもぎといった定番から、ハスカップ、かぼちゃ、バターコーンなど、色も鮮やかな十数種類をラインナップ。好みのものを選べる楽しさも相まって、年間150万個を売り上げるヒット商品となっている。

 手がけるのは地元のもち米生産農家が経営する、もち米の里ふうれん特産館。

 創業の契機は、「もち米生産農家であり、現在、当社代表取締役・堀江英一が、特産品のもち米を使った商品で、農閑期の出稼ぎからの脱却や地域雇用創出を実現できないかと考え、賛同者を募ったのがきっかけです」と、同社取締役総務部長の田口克也氏は語る。

ファストフード、コンビニの
委託製造を契機に全国区に

 1989年、経営トップの堀江氏の下、農家7戸(現在4戸)が集結。自ら育てたものに付加価値を付けて売り出すべく、もち米の主力ブランド「はくちょうもち」の白さ、粘り強さといった特徴を生かした切り餅の製造販売からスタートする。

 その名が全国に知られる転機が訪れたのが、食品企業の交流会での名刺交換などを経て、96年、大手ファストフードの冬季限定の和風スイーツ・玄米汁粉餅に使う玄米餅の製造委託を受けたことだ。

 玄米で滑らかな餅を作るにはさまざまなハードルがある。また、減農薬と大量オーダーへの対応といった難しいリクエストも、試行錯誤の末にクリア。「ひと冬で100万食を売り上げる主力商品となり、今も白餅が冬季メニューの『おしるこ』に採用されています」(田口氏)。

 さらに、大手コンビニのおでん種の巾着餅も同社に餅の製造を委託されるなど、取引が拡大していく。

 しかし、「切り餅やおでん用、お汁粉用の餅は冬季に販売時期が限られ、通年で雇用を維持する上で、季節に関係なく売れる自社ブランド商品の確立が求められていました」(田口氏)。