人事労務デューデリジェンスに注力 損保会社と「M&A保険」も開発

――社会保険労務士(社労士)事務所を立ち上げてから12年で、奈良だけでなく、大阪の梅田や難波、東京にもオフィスを構えるほど急成長されています。事業内容に何か特徴があるのでしょうか?

海蔵 労務手続きや給与計算といった社労士の通常業務に加えて、人事労務デューデリジェンス(以下、DD)に力を入れているのが、当法人の特徴です。

 人事労務DDとは、M&Aの買収対象となる企業や、IPO(新規上場)を計画している企業に対して、人事労務上の問題がないかどうか調査することです。

 これまで人事労務DDは、弁護士が法務DDの一環として行ってきました。しかし、弁護士は膨大な権利関係の調査を実施するので、人事労務までなかなか手が回りません。

人事労務デューデリジェンスに注力 損保会社と「M&A保険」も開発代表社会保険労務士・海蔵親一氏。1970年生まれ。関東学院大学経済学部卒業後、大阪市老人福祉施設連盟入職。2010年、かいぞう社会保険労務士事務所開設。14 年法人化。

 その結果、M&A後に人事労務分野のトラブルが多発していました。M&Aトラブルの85%以上は人事労務分野ともいわれます。人事労務の問題は数字に表れにくいので発見が遅れるのです。

――IPO前の企業も人事労務上の問題が多いのですか?

海蔵 問題が山積みのことが多いですね。よく見られるのは、社員のほとんどが管理監督者という企業。管理監督者は残業代が発生しないので、人件費を抑えるための方策として多用されるのですが、そのままでは絶対にIPOはできません。「うちは大丈夫ですよ」と言いながら、就業規則一つない企業もありました。本気でIPOをするなら、人事労務制度を整備することが必須です。

 こうしたニーズから、私たちのような社会保険労務士法人が人事労務DDを依頼されるケースが増えているのです。