老いを防ぐ体作り、「ウォーキングだけでは不十分」な理由ウォーキングは、中高年から高齢者に積極的に取り入れられ、肥満や糖尿病といった生活習慣病の予防や改善に効果的とされているが、それだけでは筋肉が衰えるサルコペニアを防げない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

人生100年時代、「老い」はシニア世代だけでなく、その家族にとっても切実な関心事の一つです。骨、筋肉、関節の老化と病気を防ぎ、何歳になっても動ける体を作るにはどうしたらいいのでしょうか?中高年にウォーキングは人気ですが、それだけでは、筋肉が衰える老化現象サルコペニアは防げないといいます。「老い」を防ぐためには、どのような運動が効果的なのでしょうか。順天堂大学名誉教授・特任教授の佐藤信紘氏、国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部室長の佐藤和貴郎氏の共著『順天堂大学の老年医学に学ぶ人はなぜ老いるのか』(世界文化社刊)から、何歳になっても動ける体作りのために今できることを紹介します。

60歳を過ぎると急激に筋肉の量と質が落ちる

 若いときは当たり前に動いていたのに、年をとって筋肉、骨や関節、神経など運動器の病気、痛みや衰えなどが生じると、辛かったり億劫に感じたりして、日常生活で動くことが徐々に少なくなります。運動器というのは、立つ、歩くといった日常的な動きを支える体の仕組み全体のことで、筋肉、骨や関節、神経などの働きが複雑に連動して成り立っています。どれか一つに問題が起きても体はうまく動きません。

 動かないでいると、両足のバランスが悪くなり、やがて歩けなくなったり動けなくなったりして、要支援、要介護に進行していきます。そういうケースを予防して、生涯を通じて健康で自立した生活を営むためには、楽をしないで自分の体をよく使って暮らしていくことが大事です。

 体を使い続けるには日常動作の基盤となる「筋肉」の維持が必要ですが、筋肉の量と質は加齢とともに低下していきます。

 体を動かす筋肉である骨格筋の重量は体重の約40%を占め、体を動かすための大きな原動力です。その骨格筋は30歳を過ぎると10年ごとに約5%の割合で減少し、60歳以降は約10%の減少率になると報告されています。60歳を過ぎたあたりから、急激に落ちてくることがわかります。

筋肉が体に与えるメリットは多面的

 筋肉(骨格筋)は骨や関節の周りにあって骨を支え、収縮することで関節の曲げ伸ばしを行っています。「立つ」「歩く」「しゃがむ」などの動きがスムーズであるためには、筋肉が十分に強く、しっかりとよく収縮する必要があります。

 では、筋肉がやせて、筋肉量が減ってしまうとは?