池上彰氏池上彰氏 Photo:JIJI

中東は危険で、難民はかわいそうで、イスラム教は怖い宗教。そんなイメージを、私たちはいつの間にか持っていないだろうか。だが、ニュースが伝えるのは多くの場合「例外」であり、イスラム教も過激派だけで理解できるものではない。池上彰氏がすすめる3冊を手がかりに、中東報道、コーラン、イスラム政治思想への思い込みをほどいていく。※本稿は、ジャーナリストの池上 彰『知の本棚』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

「危険な中東」「かわいそうな難民」は本当か
『こうして世界は誤解する』

 中東取材から帰ると、「そんな危ない場所に行くとは」と声をかけられます。レバノンのベイルートでは、びっくりするような高級ブランドのショッピングセンターがあるのに。ヨルダンのアンマンでは、男女の学生たちが談笑するお洒落なカフェの学生街があるのに。

 どうして人々は、ステレオタイプの見方をするのか。そんな私のような悩みを持ったジャーナリストは大勢います。この本の著者であるオランダ人ジャーナリストも、同じ思いを抱き、原因を探ります。

「特派員だった私には、あるひとつの状況についていくつかの話をすることができた。しかし、メディアはひとつを選ぶしかなく、その際に選ばれるのはたいてい広く行き渡ったイメージを補強する話だった」

「アメリカやヨーロッパのジャーナリストはバグダッドの陥落を歓迎した。だから彼らは自分たちの期待どおりの絵、つまり独裁者の像を倒して狂喜するイラク人の映像を送り、それで仕事は終わったものと見なした。アルジャジーラ(中東のアラビア語ニュース専門チャンネルのこと)の見解では、バグダッドの陥落は占領の始まりだった」