だが、これらの要求を通すと、「いつでも、どこでも、誰でも」安心して医療を受けられるという皆保険制度の崩壊につながる可能性があるので、過去いずれの政権でも医療分野への規制緩和には慎重な姿勢をとってきた。

 しかし、今回誕生した安倍・自民党政権にとって、経済の再生は至上命令だ。経済政策での失敗は、早晩、政権与党からの撤退を意味することになりかねない。経済界から規制緩和を求める圧力も強まっており、「景気回復のために」という錦の御旗のもと、医療に民間参入を許す可能性はこれまでよりも高くなっているといえるだろう。

株式会社による病院経営では
治療よりも株主配当が優先される

 もしも、医療分野で規制緩和が行われた場合、国民が受ける医療にはどのような影響が出るのだろうか。

●医薬品や医療機器の値付けの自由化、審査の短縮化

 日本の医療費はひとつひとつ国が決めており、全国一律の公定価格だ。医薬品や医療機器も同様で、これが日本の医療費を低く抑える役割を果たしている。

 しかし、規制が撤廃されて企業が自由に価格を決められるようになると医薬品や医療機器が高騰して、健康保険財政を圧迫するようになる。その結果、保険料の値上げが起こったり、効果が認められても高額な医薬品は健康保険を適用しないといった措置がとられる可能性が出てくる。

 新しい医薬品や医療機器の承認までの時間は以前より短縮されているものの、さらなるスピード感を求める声もある。しかし、薬や医療器材は命に直結するので審査は早ければよいというものではない。場合によっては患者に健康被害をもたらす可能性もある。