選挙の争点となっているTPP(環太平洋経済連携協定)。経済界を中心に交渉参加し、推進すべきという主張が多い。ところが、それは必ずしも日本の国益にかなうものではなく、単なる通商政策と違い日本の国の形を変えるような非常に大きな影響を与えるものだという声もある。それにもかかわらず、そのことが議論されていないという。TPP推進に疑問を呈する金子勝・慶應義塾大学経済学部教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
TPPは国の根幹を揺るがす
大きな変化を伴うものだ
――TPPが選挙の争点になっているが、ここまでの選挙戦において、各党のTPPに対する姿勢をどのように見ていますか。
1952年生まれ、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得修了。専門は財政学、地方財政論、制度経済学。著書に『新・反グローバリズム』(岩波書店)『失われた30年 逆転への最後の提言』(NHK出版)など
Photo by Masato Kato
各政党は、正面切って態度を表明できないでいる。それは、各論反対が出てきてしまうからだ。交渉のテーブルについてから、国益にかなわないようだったら、交渉から抜ければいいということを言う人もいるが、本当にそれができるのか、疑問だ。
TPPの経緯をもう一度思い出してほしい。始めは農業問題だった。都内でも大規模なデモが起きた。しかし、徐々にTPPは農業だけの問題ではないという事が交渉分野を見ていくと分かってきた。あの当時は、TPPの全体像を掴んでいなかったのだろう。徐々に、農業以外のものが出てきた。例えば、自動車や医療などだ。
TPPはアメリカが積極的で、オバマ政権の通商政策の目玉だ。日本に大胆な規制緩和を迫ってくるだろう。アメリカ大使館のホームページに対日要望書があるが、このなかの何が出てきてもおかしくない。