政権がどうなろうが、変わりようのないことがある。日本に、生活保護水準以下の生活をしている貧困層の人々が、今、この瞬間も、数多く存在していること。人が生存し、生活を営むためには、一定の資源が必要であること。
今回は、長年、公務員として教育に携わってきた1人の生活保護当事者の経験を紹介する。「貧困」とは、いったいどのような問題なのだろうか?
自民党政権は「終わりです」
生活保護当事者の絶望と希望
12月16日の衆議院議員選挙は、自民党の圧勝となった。
北海道、札幌から高速バスで2時間程度の場所にある、人口2万人ほどの町に住む平田明子さん(仮名・43歳)は、選挙結果を受けて、「終わりです」と語る。
平田さんの住む地域には、産業らしい産業がない。約2万人規模のその自治体全体の生活保護率は3%程度であるが、平田さんの住む地域では、住民の15%程度が、生活保護を利用している。求職するにも、通勤するにも、自家用車の保有制限が大きなハードルとなる。
平田さんも、生活保護を利用している1人だ。その平田さんの自民党への視線は、どのようなものだろうか。
「自民党、気持ち悪いです。今の自民党は、戦争やりたがっている人たちの集団だと思います。もう、保守でさえありません。自分たちが生き残りたいだけなんでしょう」(平田さん)
自民党が考えている生活保護政策については、どうだろうか。
「頼むから、生活保護への締め付けや基準切り下げは、やめてくれ、と言いたいです。生活保護基準での生活が、どれだけ苦しいか、たぶんわかっていないでしょう。本当に実行したいんだったら、実際に生活保護基準の生活をしてみてほしいです。寒いところ、それも生活扶助が最低額の『三級地の二』の地域で、1ヵ月、車なしで、公営住宅にでも住んで、生活保護基準の生活をしてみてください。その生活ができるかどうか。できないでしょうけど」(平田さん)
現在、平田さんは、生活保護を利用して、精神疾患の治療に専念している。しかし、働く能力や意欲がないわけではない。短大を卒業した後、公立小学校の教員となった平田さんは、結婚や離婚を経て紆余曲折はあったものの、教育委員会の非常勤職員など、教育に関連する仕事を長年続けてきた。しかし、職場の人事異動をきっかけとして、平田さんはパワー・ハラスメントのターゲットとなった。抑うつ状態となり、休職して回復を図ったものの、回復しないまま、2011年3月に失職。傷病手当金の支給を受けつつ治療を続けてきたが、再度の就労が可能なほどの回復は見られなかった。傷病手当金が支給されなくなった2012年8月からは、生活保護を利用している。