デジタルカメラにスマートフォン。写真撮影で見かけなくなったのが写真フィルムだ。2012年1月、かつて名門企業だった米イーストマン・コダックが経営破綻した。一方、富士フイルムホールディングスは医薬品や化粧品といった異業種に積極的に進出し成長を続けている。両社を分けたのはどこか。主力製品が市場から消えるとき、企業はどう生き残ればよいのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)

「トヨタ自動車は車がなくなったらどうするのか。新日本製鐵は鉄がなくなったらどうするのか。われわれはそれほどの危機に直面しているんだ」

 2003年、富士写真フイルム本社。主力製品の写真フィルムの需要が急速に冷え込む中、同年、社長兼CEOに就任した古森重隆・現会長は社員に訴えていた。

 そのわずか3年前まで、写真フィルムは成長を続ける大黒柱だった。ピークに達した2000年度の売上高は2600億円超と、全社の売上高の約2割を占めていた。

 これに加え、撮影したフィルムを現像してプリントするための印画紙も当時の稼ぎ頭。写真フィルムを売り、さらに印画紙を売って稼ぐ。この“1粒で2度おいしい”ビジネスモデルにより、写真関連事業は営業利益の約6割をたたき出す、まさにドル箱だった。

 そこに襲いかかってきたのがデジタル化の波だ。デジタルカメラの普及に伴い、写真フィルムの売上高は毎年200億円減ペースと、「坂道を転げ落ちるように」(同社幹部)急減していく。11年度の売上高に占める割合は1%を下回り、ピーク時と比べ約2500億円が吹っ飛んだ。

 写真フィルムが市場から消える中、富士フイルムホールディングスがかつて「追い付け、追い越せ」と目標にしてきた約130年の歴史を持つ米大手、イーストマン・コダックは12年1月に経営破綻した。