窮地に陥ったマンションディベロッパーから売れ残りの完成在庫を売価の約半値で買い取り、元値から約30%引きで消費者に販売する「再販マンション」。この再販マンションに“新種”が現れた。

 誰もが恐れをなし手をつけてこなかった、未完成物件──つまり、建設中にディベロッパーやゼネコンが破綻し、工事仮囲いもそのままに野ざらしで放置される物件──を買い取り、再販する事業を新日本建物が始めたのだ。

 現在同社が販売する再販物件4件のうち3物件は建築中断物件。さらに、来月にはディベロッパーに加え施工したゼネコンも破綻した中断物件2件も買い取り、年末から発売する予定という。

 工事が中断した物件は建物に瑕疵が発生している可能性も高く、権利関係も複雑だ。まず、中断した工事も終えなければならない。

 そこで、ゼネコンやハウスメーカー出身で、一級建築士や施工管理技師の資格保持者からなる社内の建築部が、事前に建物の非破壊検査などを行ない安全を確認する。この建築部が自社施工で残された工事も行なう。ゼネコンに丸投げする場合よりも30%ほど安い価格でできるという。管財人の事務所に通い設計図書を発掘する作業や、債権者と管財人のあいだでの利害関係の調整までやる。

 未竣工物件の所有権は、引き渡し前はゼネコンに、ディベロッパーやゼネコンが経営破綻した場合は債権者や管財人に移る。だが実際には、これらの債権者にとって未竣工物件ほど厄介なものはなく「上物を壊して更地にしたほうが処分しやすい」という声が聞こえるほど。そのため「残りの工事期間が1ヵ月を切り、あとは内装や外構工事を残すだけの物件が、ほとんど土地代のみの価格で買い取れる」(池田友彦・新日本建物専務)状況が生まれるわけだ。

 工事費や販売管理費などを入れた物件ごとの利益率も、通常の完成在庫の買い取り再販の約2倍という。「財閥系、鉄道系、商社系のディベロッパーから共同事業化の打診を受けている。今後2年間で1000戸をメドに手がけたい」と村上三郎・新日本建物会長は意気込む。

 こうした建築中断物件は昨年来の新興不動産会社の大量破綻で、全国で推定1万2000戸もあると見られている。この“水面下の爆弾”が処分されない限りは新規の物件の供給もできない、という声も多い。こうした再販物件が売れさえすれば、低迷するマンション市況の底入れの一助となる可能性は高い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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