小学校でのプログラミングの必修化2025年の共通試験での情報科目の追加など、プログラミングは現在の教育で注目されているテーマのひとつである。パソコンやタブレットがあれば気軽にはじめることができるプログラミングだが、具体的にどのような力が身につき、どのように学習をすればいいのかわからないという人は多いのではないだろうか。今後ますます、プログラミングの重要性が高まっていくことが予測され、大人も子どもも関係なく、基礎的な知識を身につけておく必要がある。そんななか、プログラミングを基礎から応用まで学ぶことができる一冊が出版された。全世界で700万人に読まれたロングセラーシリーズの『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング』である。本書は藤原和博氏(朝礼だけの学校 校長)、野田クリスタル氏(お笑い芸人・マヂカルラブリー)、尾原和啓氏(元グーグル・IT評論家)と各専門家から絶賛されている。今回は出版記念としてプログラミング教育の専門家である東京工業大学助教の栗山直子氏に特別インタビューを行い、プログラミングの意義や学習方法について聞いてきた。

プログラミング学習Photo: Adobe Stock

世界のプログラミング教育はどこまで進んでいるのか

――世界のプログラミング教育について教えてください。

栗山直子氏(以下栗山):世界ではプログラミング教育が非常に進んでいます。

 エストニア、イギリス、タイなどが有名ですが、特にエストニアでは、2012年からプログラミング教育をはじめており、世界でもトップクラスの教育といえます。

 イギリスもBBCがmicro:bitというツールを子ども達に無料で配布するなど積極的にプログラミング教育に力を入れています。

 タイでは小学生から情報教育の教科書でプログラミングを扱っており、Scratchを使った技術的なことからICTのような上流の話まで丁寧に解説がされています。

 現在の日本はプログラミングが必修科されたものの、教科として独立しているわけではなく、算数でも理科でも音楽でも既存の科目にプログラミング教育を組み込むというものです。非常に大きな進歩ではありますが、諸外国はプログラミング(情報教育)がすでに教科になっているので、世界的にはまだ違い差があるというのが現状です。

 ですが、リモート授業などの影響もあり、児童・生徒の1人1台端末などのIT化が教育現場で進んだことはポジティブな要素と言えます。

世界中でプログラミング人材が求められている

栗山直子栗山直子(くりやま・なおこ)
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院/環境社会理工学院 社会人間科学系 社会人間科学コース 助教授
専門は教育心理学・認知心理学。主な著書に『メタファー研究の最前線』(分担執筆、ひつじ書房)、『6歳からはじめるプログラミングの考え方』(児童用教材、分担執筆、アルク)、『問題解決のためのデータサイエンス入門』(分担執筆、実教出版)。

――どうして世界はそこまでプログラミング教育に力を入れるのでしょうか。

栗山:将来的にはAIをはじめとするデジタルテクノロジーに対応する人材が確実に必要になるからです。

 AIやVRなど日に日に進歩していますが、それらのツールをより進歩させたり、社会に実装していくには、たくさんの優秀な人材が必要になります。そのため、国際的にもプログラミング人材の育成は急務となっています。

――世界的にプログラミング人材が求められているのですね。今後もプログラミング人材の需要が高まることが予測されますが、一方で、日本だと親御さんがプログラミングを学ばせようとしたときに、プログラミングスクールを検討すると、月謝がそれなりにかかるという話をよく聞きます。そういった場合、どのように学習をしたらいいのでしょうか。

栗山:そういった方は書籍やScratch3.0(2022年6月時点)、文部科学省の「小学生を中心としたプログラミング教育ポータル」の教材紹介に掲載されているプログラミングツールなどで学習するのがいいと思います。無料のものも多くあるので、気軽に始めることができます。

 親子で一緒に楽しめるツールがたくさんあるので、最初はお試しでプログラミング学習を始めるのがいいかと思います。

 学習方法としては、オンラインツールや書籍には作ってみたくなるような事例がたくさん載っているので、最初はそれらを真似してみるのがおすすめです。

 また、慣れてきたらお子さんだけでなく親子でそれぞれプログラミングをしてみて、お互い真似しながら学習するのも楽しいと思います。重要なことは最初からハードルを上げすぎないことです。

――数年後には学校でプログラミングを学んだ子どもたちが世に出てきます。私も社会人として、ついていけるか少し不安なのですが、今の社会人がプログラミングを学ぶにはどのような方法があるのでしょうか。

栗山:お子さんがいらっしゃる場合は、余計な意地を張らずにお子さんに教えてもらうのが一番早い方法です。私でも教育現場で子どもに教えてもらうことは多く、デジタルネイティブ世代を先生と考えるのはいいかもしれません。

 そうでない場合も、頭でっかちにならず、子ども用のツールなどを活用するのがおすすめです。他の学習もそうですが、難しいことからはじめると躓きがちです。子ども用のツールは重要なことをわかりやすく学べるように設計されているので、大人でも直感的にプログラミングを理解できると思います。

 やさしくプログラミングを理解するということでいうと『アメリカの中学生が学んでいる14歳からのプログラミング』は網羅的でおすすめです。基礎の基礎から書かれているので、初学者でも安心して学習ができます。

 イラストも豊富でカラーで楽しく勉強ができるので、楽しく学習ができるはずです。

 少しでも多くの方がプログラミングを身につけてくれたら嬉しいです。

※本記事は『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング』の出版を記念して行ったインタビューをもとに作成しています。