JR東海は6月13日、東海道新幹線で大規模訓練を行った。昨年10月に京王線車内で発生した刺傷事件を踏まえ、安全対策はどのように変わったのか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
京王線事件で得た
二つの教訓
東京駅午後10時48分発、東海道新幹線「こだま815号」三島行き。下り最終列車が14番線から発車すると、昼間は大勢の乗客で賑わったホームがしばしの静寂に包まれる。
ところがこの日は営業終了したはずのホームに100人以上が集まっていた。午後11時ちょうど、最新鋭のN700S型車両が15番線に到着すると、彼らは続々と乗り込んでいった。
深夜の乗客の正体はJR東海の社員である。列車は午後11時27分に東京駅を出発すると、品川駅に午後11時38分に到着。そして午後11時55分に品川駅を出発すると同時に、本線上を走る実際の車両を用いた異常時対応訓練が始まった。
訓練が行われたのは6月13日深夜。JR東海は大規模災害による列車の立ち往生や、車内での傷害事件など不測の事態に備えて、実際の新幹線車両を用いた実践的な大規模訓練を定期的に行っている。今年は昨年10月に京王線車内で発生した刺傷事件を踏まえ、車内で不審者が刃物を用いて周囲に危害を加えた状況を想定して行われた。