新幹線の凶行で議論される
「手荷物検査」の難しさ
安全がウリの新幹線で痛ましい凶行が起きた。6月9日21時45分頃、新大阪に向かう東海道新幹線のぞみ265号が新横浜駅を出て走行中に、突然乗客の男がナタで周囲の乗客に切りつけ、3人が死傷したのだ。犠牲者となった男性は、襲われている女性を助けようと犯人に立ち向かいめった切りにされたというから、さぞかし無念であっただろう。
本当に許せない事件だった。被害者のご冥福を祈るとともに、犯人がなぜこのような凶行に及んだのか、一刻も早い原因究明を願いたい。
この事件を受け、世間は大騒ぎになった。新幹線では2015年、男性が近くに座っていた女性を巻き添えにしながら焼身自殺した事件も起きている。ニュースを見て、そのときの恐怖がよみがえったという人も多いだろう。
JRでは「待ったなし」の対策が議論されているが、それはなかなか簡単ではない。航空機のように刃物と液体ををチェックする手荷物検査を、鉄道でも行うべきだという案が事件の度に取り沙汰されるが、分刻みで発車する新幹線で多くの乗客がぎりぎりの時間に利用している実態を考えると、手荷物検査は現実的ではないという意見には説得力がある。