香港の水上レストラン「ジャンボ」の沈没部分香港の水上レストラン「ジャンボ」。曳航開始前にも後付けで作られたキッチン部分が崩れ落ちるというトラブルがあった(写真は2022年6月2日撮影) Photo:Ulitsa HK/gettyimages

有名な香港の水上レストラン「ジャンボ」が6月14日に閉業。曳航(えいこう)されている途中の20日に海に沈んだというニュースが世界中に配信された。当然香港国内でも大きな話題になったのだが、「転覆はしたが沈没ではない」「保険金目当ての故意の事故」など情報が錯綜(さくそう)しており、真相は藪の中。さらに沈没以降、香港はネガティブな話題続きなのである。(フリーライター ふるまいよしこ)

1997年に香港が中国に返還されてから今年で25年

 7月1日、香港が英国から中国に主権返還されて25年を迎えた。記念式典の様子や習近平・国家主席が香港入りしたことは、すでにニュースなどで目にした方も多いはずだ。

 清朝政府によって香港島が最初に英国に割譲されたのは、第一次アヘン戦争後の1842年のこと。さらに1860年には中国大陸の先っぽにある九龍半島を割譲し、1898年に深セン河から南の地域(新界地区)と海上に浮かぶ200を超える島を99年の期限付きで英国に租借した。

 香港の主権が返還された1997年というのはつまり、この3段階の割譲、割譲、租借のうち、新界地区の租借期限に当たる。1970年代にその期限が近付いたことに気がついた英国政府が、今後の香港の開発計画を進めるにあたり、その租借延長を中国に持ちかけて始まったのが中英交渉だった。だがその結果、とっくに譲り受けたはずの香港島や九龍半島まで「返還」することに合意した中英共同宣言が1984年に結ばれると、香港は大恐慌に陥り、土地や株式は大暴落し、史上初の移民ブームが巻き起こった。