カレン・アームストロングの一冊
商業という人の和がなければ成立しないビジネスを生業とした人間が考えた宗教であること、このことはイスラーム教を理解するときの原点であると考えます。
カレン・アームストロングの『ムハンマド──世界を変えた預言者の生涯 』の中に、ムハンマドを追放したマッカの多神教集団との戦いを終えて帰途につくムハンマドが語ったといわれる言葉が出てきます。
「我々は小ジハードである戦闘から戻って大ジハードに向かうのだ」
という主旨の発言です。
武力衝突という不幸ではあるが小さなジハード(奮闘努力)から、もう一回マディーナの街に戻って、この地をもっとみんなが住みやすい平和な町にする大きなジハードを実行しなければならない。
そのような意味の発言です。
ムスリムにとって、本来のジハードとは寛容と慈悲の世界を実現するための、個々人の内なる大いなる聖戦、自分自身との闘争を意味しています。
決して戦闘行為を重視しているのではありません。
イスラーム原理主義を信奉しているといわれるISなどの行動については本書 第8項で触れたいと思います。
『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)