平野克己氏平野克己氏(撮影/写真部・高橋奈緒)

 アフリカに浸透しているのは、日本という国名ではなく企業名です。ただし、その数は多くない。たとえば日本の家電製品は、かつてはどの国でも市場にあふれていましたが、今はほとんど見かけなくなっています。日本の輸出の半分は自動車で、「日本製品は壊れない」というイメージを日本車が支えてくれています。

 日本企業のアフリカ担当者からはよく、アフリカ各国の経済成長率の見通しを聞かれます。しかし、こういったマクロ経済指標は政府が経済政策を策定するためのもの。企業はミクロ経済のプレイヤーです。ビジネスにとって重要なのはミクロな市場情報のはずです。

 ある国の経済がマクロの数字で伸びていなくても、儲かる企業はすごく儲かっている。どんなに貧しい国にも製品やサービスがどんどん入っていて利益をあげています。国境を越えて市場を大網で捉える。それがグローバル企業のビジネスのやり方です。

 概して日本企業は、グローバルビジネスのやり方が分かっていないところがあります。日本でやっていることをどこまで拡大できるかと考える。だから、アフリカに限らず海外進出の際、国とそこの政府を偏重しがちで、「政府の政策が不透明だ」とか「政権が不安定だ」という判断になる。しかし政治は読めないものです。ミャンマーやロシアでも失敗している。他方市場は、特にBOP(base of pyramid)市場はもっと安定しているのです。消費者の数は毎年2.5%ずつ着実に増加しているのですから。

 じつはアフリカは、マクロ指標がカバーしている国内経済よりも、市場の集積であるミクロ指標のほうが、カバーしているエリアが大きい。アフリカは国が細かく分かれているので、一つの国の経済規模よりも商品市場規模のほうが大きいということです。携帯電話も金融サービスも、最初から国境を跨ぐことで急成長した。それは、国境を出られない政府ではなく、企業が主体となってやったことです。この点がアフリカビジネスの未来性なのです。