「富裕層」というと、ハイブランドの洋服を着たり、ひんぱんに海外旅行に行ったりと“豪華な暮らし”をしているイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』の著者・小林義崇さんによると、「資産を多く持つ人ほど、質素な生活をしている」という。いったいなぜなのだろうか?
そこで今回は、国税局時代の相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた小林さんと、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんに、「富裕層のお金の使い方」について尋ねてみた。
富裕層ほど「日常の生活費」にお金をかけない
――今日は「富裕層のお金の使い方」をテーマに、お2人に話を伺っていきたいと思います。小林さんは、国税のスペシャリストである「国税専門官」だったんですよね?
小林義崇(以下、小林) そうですね。「国税専門官」として国税局に採用されると、「あなたは○○税」と担当を各自割り当てられるのですが、私の場合は資産税担当になり、中でも相続税がメインでした。
相続税の税務調査の対象になるのは、「億レベル」の資産を遺産として残した、日本トップクラスの富裕層です。私の著書『あなたの隣の億万長者』では、そうした人たちの税務調査を通じてわかった「ほとんど知られていない、富裕層の生活のリアル」を明かしました。
――本書では、「富裕層の生活ぶりは実は質素で、服装も極めて普通」とあります。お金持ちといえば、ハイブランドの洋服を身にまとって“派手な暮らし”をしているイメージがあったので、正直かなり意外でした。
小林 そうですね。実際、富裕層は「日常の生活費」にはさほどお金をかけていません。食費や旅行代に多額を費やすわけではなく、お宅を訪れても高級車があるわけでもありません。中には、電話代のような細かな費用すら節約する人もいました。
必要以上の出費や効果の見込めない支出は意識的に避けるという、本当に「ごく普通」の暮らしぶりなんです。
どうしてそういうことがわかるかというと、相続税の調査は「どうやって巨額の財産を築いたのか?」という観点で、生活費の使い方や収入の内訳などを通帳を見せてもらって確認したり、個人的な趣味や交友関係を厳しくチェックしたりするからです。
ほかの税金の調査と比べて、個人のプライベートに踏み込むことが明らかに多いのが特徴ですね。
一方で、相続税対策で賃貸物件を数千万円で買ったり、介護付き有料老人ホームに入るために億単位のお金を出したりと、節税や健康目的ではバッと大金を使う傾向がありました。
――なるほど。お金の使いどころに「メリハリ」があるということですね。安達さんは、富裕層のお金の使い方について、何かお考えはありますか?
安達裕哉(以下、安達) 以前デロイト トーマツ コンサルティングに勤めていたときに、地方の中小企業の経営者と話す機会がたくさんありましたが、その多くが「ムダ金は絶対使わない」という強い意志を持っていました。
そもそも、少し儲かるとすぐ社員を増やしたり、オフィスを建て替えたりするような社長の会社は、あまり長続きしません。私の経験上、財布の紐が堅い社長の方が、長年安定した経営をしていたのは確かです。
私自身も現在2つの会社を経営していますが、お金をむやみに使うようなことだけは、絶対にしないように心がけています。