【アルマトイ(カザフスタン)】ロシアは今年初め、反政府デモが暴徒化していたカザフスタンに対して、2000人余りの部隊を派遣し鎮圧に当たらせた。その6週間後、ロシアがウクライナへの侵攻を開始すると、カザフには侵攻への支持を表明してロシアに恩返しする機会が訪れた。
だが、カザフはそうしなかった。
カザフをはじめ、ロシア南部と国境を接する中央アジア諸国は、侵攻に対して中立な立場を維持。旧ソ連圏諸国でロシアへの全面的な支持を表明しているのはベラルーシのみだ。カザフは西側の対ロシア制裁を履行すると確約。ロシアを迂回(うかい)したルート経由で欧州への石油輸出を拡大するとし、国防費の増強にも動いた。これに加え、カザフを自国の勢力圏に引き込みたい米国からの訪問団を受け入れた。
カザフがロシアと距離を置き始めたことは、ウラジーミル・プーチン露大統領にとって想定外の展開だ。旧ソ連崩壊以降、ロシアは長年にわたり、軍事・経済関係を通じて中央アジア全般で旧ソ連圏諸国への影響力を維持してきた。その最たる例が西欧よりも広い国土を持つ産油国のカザフだ。ロシアとカザフは4750マイル(約7600キロ)にわたって国境を接しており、その長さは米国・カナダに次ぐ世界第2位だ。