簡単そうで意外と難しい「リスクマネジメント」の定義photo AC

自然災害や戦争、感染症などに加え、近年はサイバーリスクやガバナンスリスク、事業継続リスクなどさまざまなリスクが生まれ、企業や組織はその対応に苦慮している。時代とともに変化、増大するリスクを、経営者やリーダーはいかにマネジメントしていけばいいのか。書籍『なぜリスクマネジメントは組織を救うのか』では、リスク管理のスペシャリストである著者の勝俣良介氏が、そのヒントと実践法を語っている。

普段の暮らしにもあるリスクマネジメント

 当たり前のことですが、リスクマネジメントとは「リスク」を「マネジメント」する活動のことです。リスクを「不確実性」と置き換えると、より理解しやすいでしょう。

 例えば、こんな経験はないですか? レストランで食事を終え、食事代をクレジットカードや電子マネーで精算しようとした時のこと。

店員さん 「あ、当店は現金だけなんです。申し訳ございません」
あなた 「やっぱり!? もしかしたらその可能性もあると思って、現金を少し持ってきたんだ。保険をかけておいてよかったぁ」

 この会話には、リスクマネジメントの考え方が詰まっています。家を出てレストランに向かう前に、「どういった支払い手段が使えるか」について不確実性(リスク)があったので、念のため困らないように一応現金を用意(コントロール)したというわけです。

 もう1つ忘れていけないのは、何のためにコントロールしたか、という点です。

 この例では、「お店であたふたして無駄な時間をとられないようにするため」に保険をかけて現金を事前に用意していましたね。「時間の効率化」という目的を果たすために不確実性をコントロールしたということもできます。

 以上から、リスクマネジメントとは「ある目的を達成するために、それに影響を与える不確実性を効果的・効率的にコントロールする活動である」と定義することができます。

リスクはネガティブなものばかりとは限らない

 人生に不確実性など存在せず、すべて物事がいつどのように発生するか決まっているのであれば、つまり、確実性のあることしか存在しないのであれば、楽です。計画を立てそれを実行しさえすれば、邪魔だてするものは何もなく、着実にゴールにたどり着くことができます。しかし、実際にはたどり着けないこともしばしばです。それは、計画策定段階では考えていなかった不確実性が存在するためです。

 例えば、「来年受験に合格したい。だから、1日10時間勉強しよう。半年前からは毎月、塾の模試を受けて実力を確認していこう」と仮に計画を立てたとしても、途中で思わぬ誘惑が降りかかってくるかもしれませんし、体を壊して病気になるかもしれません。こうした「不確実性」をあらかじめ想定し、コントロールの方法を決め、ゴールに確実にたどり着けるようにする。それがリスクマネジメントなのです。

 ちなみに、この例ではネガティブなリスクの話ばかりをしましたが、もしかしたら、良い塾の先生に恵まれたり、塾に良い意味でのライバルが現れたり、はたまた、自分なりに集中できる手法を編み出すことができたりと、むしろ自分の勉強を後押ししてくれる、いわば“追い風”のような「不確実性」もありえるかもしれません。当然、これも「不確実性」である以上、「リスク」であり、こうしたリスクをコントロールすることもリスクマネジメントの醍醐味なのです。