ドミノを取り巻く二つの逆風
特効薬は「習慣化」

 しかし、なぜこのタイミングでドミノ・ピザはシェアを買うのでしょうか?

 そこで、第二の理由が登場します。新規顧客や低利用顧客をアクティベートさせる必要性です。

 実は今、ピザ業界はコスト上昇以外にも二つの大きな逆風が吹いています。それが「コロナによる引きこもり特需の終了」と、ウーバーイーツに代表される「デリバリー競合の拡大」です。

 ドミノ・ピザに代表されるデリバリーピザ業態は、飲食業界全体と比較すればコロナ禍での影響は少ないどころか、「特需」と揶揄(やゆ)されるぐらい潤いました。コロナ後のドミノ・ピザについてのニュースの見出しを見るだけでも、「売上高が急増」「新規従業員1万人確保」「わずか9カ月で100店舗が増え、今年3月には国内900店達成」といった具合です。

 しかし今、コロナの第7波がここまで拡大する中で、政府は行動制限を一切打ち出さない方針に転じています。むしろコロナを感染症の2類から変更することで、コロナと共存する社会として経済を回す方針です。言い換えると、この夏を境に引きこもりニーズが激減することになるのです。

 一方で、気がつくと業界全体で大変なことが起きています。デリバリー産業の急拡大です。コロナ禍以前ですとデリバリーといえばピザかお弁当屋さんぐらいでした。それも職場での残業なら弁当、仲間で集まってわいわいならピザという形で、特に少人数が自宅に集まる局面ではデリバリーピザの競合はほとんどいない状況でした。

 ところが、コロナ禍で状況が大幅に変わります。

 いまや一般の消費者が、「今日はだるいから寝転んで家で映画でも見ながら何かデリバリーで食べよう」と思った場合にこれまでのピザ一択ではなく、どんな料理でも家に届けてもらえるようになりました。

 つまり、ウーバーイーツや出前館との戦いが激化しているのです。しかもドミノ・ピザにとって分が悪いことが二つあります。

 一つは、ユーザーには習慣性があるということです。ウーバーイーツで夕食を頼む習慣が根付いてしまうと、そのユーザーはウーバーイーツばかりを使うようになります。そしてもう一つ、ウーバーイーツなら毎日でも注文できますが、ピザは毎日というわけにはいかないのです。

 ではどうしたらいいかというと、ユーザーに2週間に1度くらいの頻度で「なんか今日はピザ食べたいなあ」と思ってもらうように習慣づけることです。

 ピザが好きな人は結構たくさんいますが、2週間に1度、ピザを食べる習慣ができている人は日本人にはまだ少ない。コロナ特需で、この2年間はピザを食べる習慣の人口が増えたのは確かです。しかしこれからは増えないし、傾向としては減ることになる。これがドミノ・ピザの置かれた経営環境です。

 では、どうしたらいいか? 新規ユーザーやピザをデリバリーする習慣から離れてしまった人を再度、引き込めばいいのです。

 スマホにドミノ・ピザのアプリを入れてもらい注文してもらって、「こうやってみるとピザって簡単でおいしかった」ということを思い出してもらえればいい。だから、このタイミングで前述した「シェアを買う」ことが重要になるのです。