ドミノ・ピザは値下げで
「シェア」を手に入れようとしている

 まず、第一の理由である「シェアを買う」ことについて説明します。

 実は「価格が安い」ということはわたしたちが漠然と想像するよりも、ずっとたくさんの売上数量を増やすことができます。

 スーパーが特売の目玉として198円で販売するマヨネーズは、通常販売価格の半額です。このようなキャンペーンは、後から累計すると通常時の5倍から10倍の数量が売れるものです。

 他にも、100均の日用品とホームセンターで売られる同様の日用品は売上高が同規模であったとしても、数量では100均が3~5倍は売れています。一皿125円の回転ずし一店舗で握られるすしの量は、一般のすし店と比較すれば10倍です。

 つまり「価格がびっくりするほど安い」ことは、売上数量を数倍規模で増やす効果があります。一方で、コスト上昇時に他店が軒並み値上げに踏み切る中での値下げは、当然ですが利益を削る行為になります。

 では、利益を減らしてでも企業が「安く売る」ことで得られるものは何か? それが「シェア」です。

 一時的なキャンペーンであれ恒久的な安売りであれ、大幅な安売りは顧客の「数」を得る効果が得られます。これを経営戦略の用語では「シェアを買う」と呼びます。ドミノ・ピザも今のこの値上げラッシュの時代に値下げキャンペーンに踏み切ることで、多数の顧客を手に入れることができるわけです。