最低賃金を巡る「大矛盾」、正社員増加でも解決しない問題の本質とはPhoto:PIXTA

最低賃金問題の裏には
あまり知られていない三つのファクトがある

 参議院議員選挙の争点のひとつになっているのが、最低賃金の問題です。現在の日本の最低賃金は全国加重平均で930円。コロナ禍が始まった2020年が1円しか上がらなかったのを除き、過去5年では毎年3%程度上昇して現在の賃金水準に至ります。

 政府はこの最低賃金を早期に1000円台に乗せたいといいますが、年3%ペースの上昇ではそこまで到達するのにあと3年かかります。海外の最低賃金を見るとEU諸国が1600円近辺、アメリカは州にもよりますが、例えばカリフォルニア州は約2000円と、G7の中では日本はかなり置いていかれた感じです。

 国民感情としては最低賃金を上げてもらわないと値上げラッシュの中で生活が成り立たない一方で、以前記事に書かせていただいたように経済学的には最低賃金を人為的に動かすと逆に雇用が減るなどマイナス点が大きいことも分かっています(詳細は、『日本の最低賃金を1500円に引き上げたら起こる「三つの悪いこと」』を参照)。

 そもそもの問題として、最低賃金を議論する政治家も行政も有識者もメディアの社員も、基本的に最低賃金で働いているわけではないという矛盾があります。

 そして、最低賃金近辺で働いている人たちがどのような生活をしているのかはSNSなどで個別の情報は入る一方で、統計的な数字はあまり知られていないものです。

 実は最新の数字を見ると、最低賃金の問題は一般の読者の想像とは少し違う問題になりかけているかもしれません。あまり知られていない三つのファクトを提示したいと思います。