寄稿 中国に勝つのは中央統制ではなく自由な企業精神Photo:The Washington Post/gettyimages

――筆者のニッキー・ヘイリー氏はサウスカロライナ州知事(2011~17)、国連大使(2017~19)などを歴任

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 米国が直面する世界最大の脅威は共産主義の中国だ。幸運なことに、米国には中国にはない武器がある。それは経済的自由だ。米国を人類史上最も革新的な国にした精神を活用すれば、中国にチャンスはない。しかし現在、米国の多くの政策立案者が、中央集権的な計画と社会主義的な統制に傾き、米国の優位性が損なわれている。

 米国の危険な後退を示す一例は、2800億ドル(約37兆2400億円)の税金を特定の利益団体に振り向ける「半導体および科学法」だ。この半導体法の背景には、米半導体産業が政府の補助金を受けている中国の競合他社と競争できるよう支援する必要があるという考えがある。もう一つは、歳出額が4300億ドル超に上る「インフレ抑制法案」で、米国の長期的な成功に不可欠だと政治家が主張する企業に資金を投じる計画だ。

 この二つの法案には、米国の支配的な地位を確保するため、政府が主導して米経済を動かすことができるという前提がある。米政府が采配を振るえば、共産主義の中国は米国に取って代わる計画を打ち切らざるを得なくなるだろうという説明さえ、われわれは受けている。ジョー・バイデン大統領の署名により半導体法が成立した後、国家経済会議(NEC)のブライアン・ディーズ委員長は、「われわれはこの法律によって、最先端のイノベーションがどこで起きるかに関するルールを決めることができる」と自慢げに話した。