ビジョン・ファンドへの投資、中東の賭けは裏目にPhoto:Yuichi Yamazaki/gettyimages

 5年前、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国は経済の多角化とハイテク分野への参入を急ぐため、ソフトバンクグループが率いる「ビジョン・ファンド」に600億ドル(約7兆9800億円)を投じ、スタートアップ企業に狙いを定めて大胆な賭けに出た。

 だが、投資リターンは期待を大きく下回っている。

 最近のハイテク業界の低迷は、ビジョン・ファンドとその最大級の投資家であるサウジとアブダビに大きな打撃を与えている。これまで両国は、ロボットピザメーカーの米ズームピザや、シェアオフィス大手の米ウィーワークなどに大金を投じてきたが、いずれも裏目に出ている。

 ソフトバンクは先週、6月30日までの12カ月間に、ビジョン・ファンドがこれまでため込んできた400億ドル近い利益が帳消しになったと発表した。同社の直近の決算をウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が分析したところ、サウジとアブダビが600億ドルを拠出した投資先の評価額は現在約710億ドルで、2017年以降のリターンは20%未満にとどまる。

 それは利益こそ上げているものの、同期間中のハイテクセクターなどのリターンには遠く及ばない。株式市場はこのところ低迷しているものの、過去5年にわたり力強く上昇してきた。