その番号に電話してみると、数コール後に転送されたようでコール音が切り替わり、また数コールしたのちに音声ガイダンスが流れました。

「商品のお問い合わせについては1番を、契約に関しては2番を」。その後いろいろな問い合わせ内容が続いて最後に「担当者とお話しされたい方は、このままお待ちください」というガイダンスの後、BGMが流れ出しました。しかし、1分たっても5分たってもBGMがループするだけでした。

 長く待たせることによって諦めさせようという意図がありありと感じ取られ、私は何十分でも担当者が出るまで待ってやろうと思い、スマホをスピーカーモードに切り替えて充電しながら待ち続けました。それから30分近く待ったのち、若い男性が「お待たせいたしました、ご用件は?」とこれまたぶっきらぼうに言ってきました。

 わたしが、カナミさんの状況を話したところ、その男性は「無理です!キャンセルできません!」の一点張りでした。お試し期間が2日というのはあまりにも短く、肌に合うかどうか判断できないことを説明しても、「無理です!キャンセルできません!」の一点張りのままでした。そして男性は「これ以上話すことはありませんから!」と勝手に電話を切ってしまいました。

 丁寧な説明も誠意のかけらもないことに、心底腹が立ちました。隣で聞いていたカナミさんは「わたしのせいで申し訳ありません。もう諦めますので」と泣き出してしまいました。

泣き寝入りはできない!
依頼者と二手に分かれて行動

 わたしは、そんな彼らのやり口に我慢できず、諦めきれませんでした。まだやれることはあるはずです。わたしは販売会社に直接行ってみることにしました。

 その間にカナミさんには、二つのことをお願いしました。一つ目は、クレジットカード会社に支払いの差し止め依頼をしてもらうことです。二つ目は、消費生活センターに相談することです。同センターはインターネット取引における消費者被害の発生、拡大防止を図ることも仕事の一つなのです。とにかくカードの支払い期日はまだきていないので、支払い自体を双方に問い合わせて差し止めることができたらと思ったのです。

 カナミさんに説明した後、わたしはすぐさま都内某所の販売会社が入っている住所に向かいました。到着した建物は自動ドアもない雑居ビルで、部屋の入り口は透明のガラス扉で、中が丸見えでした。明らかに無人で、ほとんど人が出入りしていないだろうことが分かる散らかり具合でした。 ガラス扉には鍵がかかっており中には入れませんでした。試しに電話してみると、中の電話機が鳴り、数コールして転送されたタイミングで、中の電話機のコール音も停止しました。もう一度かけても同じ状況でした。おそらくここは転送用の電話機を置いているだけのダミー会社であると思われました。