英政府の電力価格統制策、一番ましな選択肢Photo:Thierry Monasse/gettyimages

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 投資家は長い時間をかけて「経済学入門」で学んだ教訓を忘れ去ってきた。だがここにきて、政府による価格統制が政策手段に盛り込まれることを受け入れる必要があるかもしれない。

 英国で6日、第56代首相にリズ・トラス氏が就任し、家庭用エネルギー料金を現行水準で凍結することこそ、最初に注力する重要な政策だとの考えを表明した。英電力会社が一般家庭に請求できるエネルギー料金の年間上限額は10月に3549ポンド(約59万円)に引き上げられる予定で、1年間で約3倍に上昇する計算だ。これに対し、英政府は今年の冬から来年の冬にかけて18カ月間にわたりエネルギー料金の上限を2500ポンド(約41万5000円)前後とし、エネルギー会社が被る損失を補填(ほてん)する計画だと広く考えられている。

 トラス首相は減税も公約に掲げているため、エネルギー料金への対応はおそらく借金で賄うことになるだろう。だが、イングランド銀行(英中央銀行)の金融引き締め政策により英国債10年物の利回りがすでに3%を超え、ポンドは対米ドルで1985年以来の低水準で取引されていることから、一部の投資家は懸念を深めている。