英金融混乱の教訓:恐れるべきは債券でなく通貨Photo:Richard Baker/gettyimages

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 ジェームズ・カービル氏は為替市場になりたいと望んだはずだ。

 ビル・クリントン元米大統領の政治顧問だったカービル氏が1994年、「生まれ変わったら債券市場になりたい」と述べたことは有名だ。これは為替が自由に変動する限り、公的債務の増大が政府支出の大きな制約になるとの認識がいかに投資家や当局者の間で広く浸透していたかを物語っている。だが、英国の財政戦略を巡る危機は、それが間違っていることを見せつけた。

 イングランド銀行(英中央銀行)は28日、英国債の急落に歯止めをかけるため介入に踏み切った。新政権が2910億ポンド(約46兆5300億円)という巨額の資金をつぎ込みながら、成長押し上げにはほとんど効果のないとみられる財政戦略を打ち出したことで、英国債は激しく売り込まれていた。インフレ退治に向けて、保有する証券の売却に着手すると明らかにしていた英中銀は方針を一転。急きょ長期債を買い入れると発表した。利回りは直後に急低下した。