――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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英政府が掲げる巨額減税に対する金融市場の容赦のない売りを、英国独自の問題だと片付けたくなるのも分かる。
それは間違いだろう。市場はより深いメッセージを送っている。借金することは一段と危険な時代になった――。
新型コロナウイルス禍以前は、民間の投資や需要が低迷していたことで、インフレ率は、2%の目標を掲げる中央銀行にとって低すぎる水準に張り付いていた。こうした時代には、政府の財政赤字が物価の押し上げ要因となることで支援になっていた。さらに物価のみならず、金利にも上昇圧力がかかるため、ゼロ近辺の低金利から脱却できない状況に危機感を募らせていた中銀にとっても、渡りに船だった。つまり、市場の観点からみると、政府の借り入れ能力は無限だった。