プーチン大統領取り巻きのオリガルヒにとって、プーチンの侵略は迷惑な話だ Photo:Contributor/gettyimages

ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領には、オリガルヒと呼ばれる富豪の取り巻きがいる。プーチンとオリガルヒの関係、海外に散らばっているオリガルヒの実態についてさまざまな角度から分析した。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

プーチンという独裁者の目的は何か

 プーチンは、ウクライナはロシアと一体でなければいけないと言って戦争を始めた。一体であると主張する大論文も書いた(この論文はロシア大使館のフェイスブック上で翻訳されている。プーチン大統領: 論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」2021年7月12日)。2021年には多少の関心を持たれたが、今や読む人は誰もいない。

 そもそも、プーチンはなぜウクライナ侵攻を始めたのだろうか。2014年には、クリミアと東部の2州をあっという間に奪えたから、今度も簡単にできるだろう。奪えたら、ヨーロッパ国境に直接接することができる。ウクライナの人口は4500万人もいる。ロシアの人口は1億4000万人だから、合わせて2億人近い大国になる。ロシアをバカにしていた西側諸国をアッと言わせることができると考えて、侵攻したのだろう。しかし、この企ては、1~2週間でウクライナ全土を奪えることができるという前提から成り立っていたと思われる。

 ところが実際には、ウクライナの抵抗は強く、征服できない。軍備も兵隊も足りない状況に追い込まれた。独裁者プーチンの野望は砕けた。

 ロシアの権力者にとって大事なのは何だろうか。権力と富を維持する以上に重要なことはあるのだろうか。富の代表であるロシアの富豪・オリガルヒとは、ソ連崩壊の際に、エネルギー企業や国有企業を手に入れた人々だ。プーチンとその一派は、さらにそのオリガルヒから富を奪った人々でもある。オリガルヒも、安全のために自らプーチンとその一派に富を自発的に渡した。安全のために、オリガルヒもプーチン一派も、海外に資産を持っている。最低限、海外に流出させた富はある程度、安全を確保できると考えているのだろう。ロシアとは、その最大の特権階級も信用していない国家なのだ。