写真:ロシア,地図,旗Photo:PIXTA

旧ソ連、東欧諸国には順調な経済発展を遂げている国が多いのだが、実はロシアは2010年前後からほとんど成長していない。それは何故だろうか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

2010年前後から
経済成長していないロシア

 旧ソ連、東欧諸国には順調な経済発展を遂げている国が多いと本欄『「ロシア帝国」がコンプレックスを抱く理由、旧東側諸国のデータで検証』(2022/3/28掲載)で既に述べたが、ロシアは2010年前後からほとんど成長していない。

 そもそも、ロシアの経済発展はほとんどが原油と天然ガス頼みである。一方、旧ソ連・東欧諸国の中で最も成功しているハンガリー、ポーランド、エストニア、リトアニア、スロベニア(IMF,World Economic Outlook Database Spring 2022で1人当たり購買力平価GDPが3.5万ドル以上の国、2017年国際ドル。ちなみに日本は4.3万ドル)は資源頼みで発展しているわけではない。ハンガリー、ポーランドなどは、自動車関連の外国直接投資を、エストニア、リトアニアはハイテク産業を、スロベニアは機械工業を中心に発展している。

 下図は、これらの国とロシア、ウクライナの経常収支の対GDP比を示したものである。ここで「経常収支=輸出等-輸入等=純資本流出」となる。経常収支が赤字であるとは、輸出代金が輸入代金より少ないということである。

 ということは、海外からお金を借りているか投資を受け入れていることになる。多くの人が、経常収支が黒字であることは、赤字であることよりも良いことだと思っているようだが、海外から投資を受け入れるのは良いことである。お金を借りればより高い成長ができるが、借りなければより高い成長ができない。もちろん、債務の罠(わな)に陥る可能性は常にあるが、投資された資金のリターンが高ければ問題はない。

 ハンガリー、ポーランド、エストニア、リトアニアの経常収支の対GDP比(2000年~22年平均)はマイナス2.5%からマイナス3.5%程度、スロベニアとウクライナはマイナス1%であるが、ロシアはなんとプラス6%である。つまり、ロシアは全世界に対してお金を貸しているか投資しているのである。