液化天然ガス(LNG)のひっ迫した市場と高値にだまされてはいけない。新規LNG投資の先行きは、見かけよりもどんよりとして不透明だ。欧州に輸出された天然ガスのスポット価格は、今夏の高値水準からは下げているが、依然として1メガワット時当たり100ユーロ(約1万4700円)前後の水準にある。つい1年半前には数年来の供給過剰のため20ユーロ近辺で推移していた。最近の機運の高まりを受け、LNG液化施設の建設に向けたプロジェクトが急増しており、コンサルタント会社ライスタッド・エナジーによると、今年は年産5000万トン以上の契約が締結されている。だが価格が下落すれば、スポット市場に利益増の期待をかけるLNG供給業者や販売業者の失望を招く可能性がある。欧州海域では現在荷揚げを待つLNG船が渋滞し、価格を押し下げ始めている。これは市場がいかに急変動しかねないかを暗示している。より長期的には、新プラント建設が本格化する数年の間に、高値の影響で供給だけでなく需要も変化するだろう。特にロシア産ガスが市場に戻ってくる場合はなおさらだ。