10月29日深夜、ハロウィーンの人出でにぎわう韓国・ソウルの梨泰院(イテウォン)地区で、人並みに押しつぶされて154人が亡くなるという事故が起きた。転ぶ人、意識を失う人、負傷者が出る中でも人々は前進を続けたという。韓国では、今回の事故は「人災」だと、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権を責める声も出始めている。コロナ前にハロウィーン見物のため現場を訪れたことがある筆者は、事故への対応や事故の起き方そのものにも韓国の国民性を感じたという。もし日本だったら、この事故は違う展開になっていたのではないか。(ビジネスライター 羽田真代)

梨泰院で群衆の雪崩事故、
154人が犠牲に

ソウルの繁華街、梨泰院で起きた将棋倒しとみられる事故現場で活動する救急隊員(韓国・ソウル)韓国・ソウルの繁華街、梨泰院で起きた将棋倒しとみられる事故現場で活動する救急隊員 Photo:EPA=JIJI

 韓国でまた痛ましい事故が起こった。ソウル・梨泰院で群衆雪崩が起き、20代・30代を中心に多くの若者が命を落としたのだ。事故が発生したのは10月29日。筆者がこのことを知ったのは、30日に日付が変わってすぐのことだった。そのとき見たニュース記事には「将棋倒しで50人心肺停止か」と書かれていた。

 将棋倒しで50人も心肺停止だなんて、にわかに信じ難い。事実を確かめるためにSNSで現場の様子を検索してみた。すると、ぐったりと倒れている人の姿や、狭い通りのあちらこちらで心肺蘇生が施されている様子が次から次へと出てくるではないか。映像を見てようやくニュースが本当なのだと確信した。

 30日の朝、起床して最新のニュースを見てみると、死者数は149人に増えていた。同日の夜には死者が154人(女性が98人、男性が56人)、負傷者が149人(うち33人が重傷)、死亡した中には日本人女性2人も含まれていることが分かった。身分証を携帯していない被害者も多く、身元確認に時間を要したようだ。

 韓国で多くの若者の命を失った事故は、2014年のセウォル号の沈没事故以来だ。このときは韓国の学生らを中心に304人が死亡し、142人が負傷した。その他、韓国で過去に大勢の人が死亡した事故は次の通りである。

1993年10月:西海フェリー号沈没事故 <292人死亡>
1994年10月:聖水(ソンス)大橋崩壊事故 <32人死亡、17人負傷>
1995年 6月:三豊(サンプン)百貨店崩壊事故 <502人死亡、937人負傷>
2003年 2月:大邱(テグ)地下鉄放火事件 <192人死亡、151人負傷>