賃金上げを積極的にしない
代償として失うものとは
2022年度の最低賃金の目安が、全国平均で時給961円に決まったという。
上げ幅は過去最大の31円(伸び率は3.3%)だったということもあって、毎年恒例の「アンチ賃上げ」の声はいつにも増して激しくなっている。その主張はざっとこんな感じだ。
「物価高騰でたださえ苦しいところを強制的に賃上げするようにしたら倒産や失業が増えて経済が悪化する」
「最低賃金を引き上げても恩恵があるのは一部の人なので、それよりも消費税をゼロにすべき」
ただ、こちらも毎年指摘させていただいているが、これは世界の経済の常識と照らし合わせると、かなりぶっ飛んだ主張だと言わざるをえない。
『「年収200万円暮らし」炎上の裏で、最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌』の中でも詳しく紹介したが、世界では国や自治体が「経済政策」として最低賃金を引き上げていくのが一般的だ。物価が上がっているのに賃金据え置きでは、消費は冷え込んで経済も成長しない。
また、賃金の底上げをすることで、「現状維持」に陥りがちな中小事業者の成長が促される効果も期待できる。だから、アメリカでもEUでも東南アジアでも、そしてアフリカでも最低賃金の引き上げは「国策」として進められている。
このように「賃上げこそが最強の経済政策」という考え方がメジャーなので、「賃上げよりまずは消費税をゼロに!」みたいな珍妙な政策をしている国は少ない。実際、日本よりもはるかに高い消費税の国であっても、継続的な賃上げを実現することで経済が成長しているのだ。
もちろん、国にはその国ならではの事情もあるので、なんでもかんでも世界に合わせなくてはいけないというものでもない。「成長を目指して格差が広がるより、みんなで等しく貧しくなっていく方がいい」ということならば、賃上げを潔くあきらめて、「バラマキ」を気が済むまで続けていくというのもひとつの道だ。
ただ、そういう道を選ぶのならば、「周囲の国からどんどん追い抜かされて貧しくなる」ということも受け入れなくてはいけない。「他の国のように最低賃金は引き上げないが、他の国と同じように経済成長はしたい」なんてムシのいい話は通用しないからだ。
このあたりの現実は、隣の韓国を見ればわかりやすい。