カタール・ドーハPhoto:PIXTA

サッカーW杯カタール大会が初めてイスラム圏で開催され、世界18億人のイスラム教徒が歓喜している。他方、カタールは人口280万のうち9割が外国人労働者の国であり、その特殊な社会構造により、日本人には信じがたい課題を抱えている。中東やイスラム圏に造詣が深い元外交官が解説する。(著述家 山中俊之)

カタール大会は「イスラム圏初」に意義

 日本代表の初戦、対ドイツ戦で日本が歴史的な勝利を収める、予想外の展開で始まったW杯カタール大会。サウジアラビアがアルゼンチンに勝利したり、モロッコがベルギーに勝利したりと、番狂わせが多い印象だ。

 カタール大会は、「中東初の大会」という枕ことばがつくことが多い。確かに、カタールは、ペルシャ湾に面した湾岸諸国に位置付けられる。確かに、湾岸諸国を含む中東でW杯大会が開催されたことはない。

 それも重要な点であるが、筆者には、「イスラム圏初の大会」という方が、より世界史的な意義があると思う。イスラム教徒の友人に聞くと、皆一様に、「イスラム圏での初開催、なんて素晴らしいことだ!」「イスラム教に対する理解が深まればうれしい」と言っていた。

 一方で、各国のメディアからは、カタールにおける外国人労働者への対応が課題として指摘されている。そこで本稿では、カタール大会の世界史的な意義と課題について、改めて考えることにしたい。