写真:ロシアのプーチン大統領Photo:EPA=JIJI

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから、10カ月がたった。9月にはウクライナ軍の奇襲を受けて東部ハルキウ州からロシア軍が撤退、11月にはヘルソン州の西岸からも撤退した。プーチン大統領がこれから行うこととその理由を解説する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

日本ではウクライナ発の西側の報道が中心
そのすべてが正しいわけではない

 ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから、10カ月になります。国連憲章を破り、世界の秩序を破壊したロシアとプーチン大統領の責任は、厳しく問われなければなりません。

 国際社会には「同盟国の掟」があります。「同盟国の言い分と、同盟を結んでいない国の言い分が対立した場合、同盟国が正しいと受け止める」という掟です。ウクライナは日本の同盟国ではありませんが、アメリカとは事実上の同盟国です。すなわち常にウクライナの利益を重んじることが、日本の取るべき立場です。

 ただし国際情勢の正確な分析は、まったく別の話です。報道も基本的に同盟国の掟の中で成り立ちますから、日本ではウクライナ発の西側の報道が中心です。しかしそのすべてが正しいわけではなく、信頼度が低かったり、何らかの意図を含んだ偽物の情報も含まれていたりすることを知らなければいけません。

 同様に、ロシア発の情報はすべて虚偽だと受け流すのも、大きな間違いです。ロシアで何が報じられ、プーチン大統領やロシア国民は何を考えているのか理解することは、とても大切です。この新連載では、善悪や好悪や先入観に惑わされない情報の読み解き方に触れながら、国際情勢について解説していきます。

 9月にはハルキウ州から大規模な撤退を行い、11月にはヘルソン州の西岸からも撤退したロシア。プーチン大統領の目標に変化はあるのか、見ていきましょう。