「受験日が迫っているのに、勉強に集中できない」という悩み。時間を忘れるほどの「究極の集中状態」を意図的につくりだす方法は、ないものだろうか?
そこで参考になるのが、受験大国・韓国で社会現象になった50万部のベストセラー『勉強が面白くなる瞬間』だ。著者・パク・ソンヒョクは、塾さえない環境で周囲より遅れて勉強を始めたが、「心」を鍛えれば環境や頭脳は何の問題にもならないと固く信じて勉強。その結果、韓国トップのソウル大学法学部をはじめ、延世(ヨンセ)大学経営学部、東新(トンシン)大学韓医学部にも同時合格するという快挙を達成した。
学生の98.4%がこの本を読んで「勉強をしたくなった」と証言したという本書。なぜ、勉強をしなかった人たちが勉強に夢中になるのか? 勉強の本質とは何か? 本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「勉強に没入できるようになる1分トレーニング」を紹介する。(構成:川代紗生)

勉強が面白くなる瞬間Photo: Adobe Stock

「究極の集中状態」を意図的につくりだす

 誰しも一度は、「究極の集中状態」を体験したことがあるだろう。

 たとえば子どもの頃、おもちゃの積み木を夢中になって組み立てていたとき。

 きれいな朝日を写真におさめようと、シャッターを切っているとき。

 面白いドラマに出会い、時間も忘れて一気見してしまったとき。

 まわりの音も聞こえなくなるほど没頭して、気がつけば、あっという間に時間が経っている。

 そんな「究極の集中状態」を意図的につくれたらどんなにいいだろう、と思うことはないだろうか。

 とくに大学受験や資格試験の勉強など、「やりたくないけどやらなければならない」ものに立ち向かうときほど、なかなか没頭状態にはなりにくいものだ。

 ここで「究極の集中状態」を武器にできれば、スムーズにことが運ぶようになるだろう。

 机に向かっても雑念が追い払えず、教科書の内容が頭に入ってこない。すぐにスマホを触りたくなってしまう……。

 そんなときは、毎日続けることで徐々に効果が出てくる「1分間ルーティン」を試してみよう。

1分でできる! 雑念を追い出すトレーニング

 学習におけるイメージトレーニングの有効性を示しているのは、受験大国・韓国の大ベストセラー『勉強が面白くなる瞬間』の著者、パク・ソンヒョクだ。

 彼は、「究極の集中状態」を意図的につくるためにさまざまな方法を試し、この方法に辿り着いたという。

 彼は、本書の中でこう語っている。

「没頭状態」になると、同じ1時間でも全く違ったものになります。没頭していないときの5時間、10時間よりも時間の質が驚くほどに高くなり、効率がぐんと上がるからです。(中略)勉強しなくちゃと無理に自分に言い聞かせなくても、まるで魔法にでもかかって、勉強が自分を引っぱってくれるように時間が早く過ぎていきます。(P.150-151)

 雑念を追い出すイメージトレーニングを、勉強を開始する前に毎回必ずやってみよう。

 たとえば、イチロー選手が打席に立つ前にバットを立て、集中力を高めていたのは有名な話だ。

 自分のパフォーマンスを最大限発揮するため、自分なりの精神統一法やルーティンを決めているスポーツ選手は多い。

 それに倣って、自分なりのルーティンを決めてみよう。勉強を始める前に、本を読む前に、ノートに何かを書く前に。

 本書では、いくつかの方法が紹介されている。どれも簡単で、すぐに試せるものだ。一度トライしてみて、しっくりきたものを固定ルーティンにするのがいいだろう。

自分の呼吸を感じる

 まずは、いちばん手軽な「呼吸法」から試してみるのがおすすめだ。

 深い呼吸を感じることに気持ちを集中すると、さまざまな雑念がすっと消えていく。

 スティーブ・ジョブズが瞑想をルーティンにしていたのも有名な話だ。GoogleやFacebook、Yahoo!など、社内研修にマインドフルネスを取り入れる企業も増えている。

 アメリカの映画監督デヴィッド・リンチは、1日2回の瞑想を欠かさずおこなっていると、さまざまなメディアのインタビューで語っている。毎朝瞑想をしてから仕事に取り組むようにしているそうだ。

 とはいえ、毎日30分など、まとまった瞑想の時間を確保するのは難しい、という人もいるだろう。

『勉強が面白くなる瞬間』で提案されているのは、1分から2分程度、勉強をはじめる前に机の前でできる簡単な方法だ。

まず背筋を伸ばして椅子にぴったりつけたら、体の力をすっと抜きます。鼻から空気を吸って胸と腹を満たし、またゆっくりと吐きながら自然に「自分の呼吸」を感じてみましょう。それ以外のことはすっぱり忘れて、一回一回の呼吸だけに気持ちを集中します。心の中で静かに、「吸って~」「吐いて~」と唱えると、もっといいでしょう。(P.152)

 実際に試してみると、自分がいかに普段、浅い呼吸をしていたのかがよくわかる。

 筆者も、日々の習慣に「1分間の呼吸タイム」を取り入れてみたが、「焦り」や「不安」の気持ちがさざ波のように鎮まっていくのを感じた。

 勉強やインプットに取り組みたくても、他に締め切りが迫っている仕事や雑用などがあると、「本当に終わらせられるかな」「こんなことしてる場合じゃないのに!」と、焦りの気持ちが湧いてきてしまうものだ。

 焦ると、心臓の鼓動もバクバクと速くなり、手のひらに汗が出てきたり、貧乏ゆすりが止まらなくなったりと、体全体がソワソワしてくる。注意が散漫になり、さらにイライラするという悪循環だ。

 呼吸は、そういったソワソワ感をリセットさせてくれる。

心のスイッチを切り、ストレスを発散させる

 呼吸を整えるだけでは不安をコントロールできないときに試してほしいのが、次のイメージトレーニングだ。

 ストレスで心が乱れ、雑念ばかりで落ち着かないときに試してほしい。本書によれば、熱くなった心のスイッチを強制的に遮断するイメージを思い浮かべると良いという。

そして心の中に一つの風船を想像してみましょう。赤い風船でも青い風船でもかまいません。パンパンに膨れ上がり、いまにも割れそうな風船を心の中に描いて、自分のストレスを文字にして書いてみるのです。単語でも文章でもかまいません。一文字ずつ、油性マジックでくっきりと書くシーンを心の中で想像します。(中略)次に「ストレス風船」を5秒間、抱きしめる自分の姿を想像します。1、2、3、4……、「5」の瞬間、風船をパン! と割るか、空中に飛ばすシーンを想像します(P.153)

 なるべく具体的に想像するのがポイントだ。

 慣れるまでは、紙に風船の絵を描いてトレーニングするのもいいだろう。

ルーティンを、受験当日の緊張対策に

 本書では、そのほか、

・脳を小川で洗うところを想像する
・腹の上に地球が乗っているのを想像する

 などのトレーニング法も解説されている。

 筆者もひととおり試してみたが、「毎日継続すること」で徐々に効果が高まってくるのを感じた。

 大学受験や資格取得をゴールにしている場合、どうしても「うまくいかなかったらどうしよう」「受験日までに間に合うのだろうか」など、受験本番への不安や恐怖心が押し寄せる。

 そんなとき、「これさえやれば気持ちが落ち着く」というイメージを習慣化しておけば、受験当日に緊張が止まらなくなったときも、平常心を取り戻せるだろう。

 恐怖で指先が震えることもなく、本来の実力を発揮できるはずだ。

 勉強に集中するための「心の整え方」にフォーカスした本書。いままでにない独学のヒントが詰まっている。