中外製薬が初の売り上げ1兆円超えも来期は減収予想…乱高下させる「薬品」の正体Photo:PIXTA

新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は中外製薬や武田薬品工業などの「製薬」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

中外製薬の業績が
乱高下する裏に「ある薬品」

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界4社。対象期間は22年8~12月の四半期(4社いずれも22年10~12月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・中外製薬
 増収率:36.1%(四半期の売上収益4385億円)
・武田薬品工業
 増収率:21.7%(四半期の売上収益1兆966億円)
・第一三共
 増収率:21.2%(四半期の売上収益3405億円)
・アステラス製薬
 増収率:18.1%(四半期の売上収益4022億円)

 4社そろって2桁増収となった製薬業界で着目すべきは、中外製薬の「V字回復」である。

 これまで本連載で解説してきた通り、中外製薬は19年10~12月期から22年1~3月期までの10四半期のうち、実に8度の2桁増収を記録。22年1~3月期には前年同期比113.6%増(約2.1倍)という驚異的な増収率をたたき出していた。

 だが、22年4~6月期の増収率は一転して6.4%に低下。そして直前の四半期(22年7~9月期)にはマイナス21.6%にまで急降下した。そこから再び上昇気流に乗り、今回分析対象とした22年10~12月期は3割超の四半期増収率を記録した。

 次ページに記載した時系列推移のグラフを見ると一目瞭然だが、ここ最近の中外製薬の増収率は大きく乱高下しているのだ。

 結果的に、中外製薬では22年7~9月期の2桁減収を他の四半期の増収でカバーし、22年12月期通期の累計売上収益が史上初めて1兆円を突破。過去最高を更新した。

 ところが、その勢いも長くは続かず、23年12月期の通期業績予想(※Core業績)は減収減益を見込んでいる(※中外製薬が経常的な収益と定義する項目に限定した経営指標)。

 実は、中外製薬でこれほど大きな「好不調の波」が起きる背景には、「ある薬品」の売れ行きが関係している。

 次ページ以降では、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、その実態について詳しく解説する。